忘年会と入院中の同僚

 

何か月か前に会社の中で倒れて救急車で病院に搬送された同僚であるが、最近では誰も彼のことを話題にしなくなった。入院して、しばらく直後は皆でお見舞いに行ったりしたものであるが、今では誰も行っていないようである。仮にお見舞いに行ったとしても本人に意識がないのであるから、あまり意味がないのかもしれないが。

闘病中の彼の存在を理由にして上司の歓送迎会を断っていた連中も年末の忘年会の話題で盛り上がっている。彼の存在は既に風化している。

会社での人間関係、あるいは人間という存在そのものが、所詮、その程度のものなのであろう。ちなみに私は最初から最後まで冷めた目で事態を観察していた存在である。

 

それで、年末の会社行事といえば忘年会であるが、さらに冬場にしなければならないことのひとつにクルマのタイヤの履き替えがある。
それにしても、今日は冬場にしては随分と生暖かい天気であった。五月のフェーン現象のような気温である。地震の前兆であろうか。今年は暖冬かもしれない。ところで今日の朝礼で言われたのであるが、会社の駐車場に停めてある通勤用のクルマで、まだ冬用タイヤに履き替えていないものがあるとのことであった。わざわざ調べたヤツがいるのであろう。総務課の連中であろうか?「四輪駆動車だから良いということはありません。通勤に使うクルマは冬用タイヤに履き替えて下さい」とのことであった。もしかしたらクルマのナンバーもチェックしているのかもしれない。

それで年末年始の休暇であるが、休日出勤の要請を急に受けた。忘年会のある日である。業務内容は保全となっていた。多分ペンキ塗りではないか。忘年会か休日出勤要請のどちらかを断わることになるであろう。


そして、自分は忘年会には行きたくないのかな、などと考えながら、ふらりと書店に立ち寄った。書店の横に敷設されているドーナツショップでコーヒーを飲んでいると制服を着た警察官が二人も入ってきた。万引き事件でも起きたのかと思い、店員に尋ねてみると消火栓の点検だという。消火栓なら消防署の管轄のような気がするのであるが警察なのだそうだ。制服を着た人が来るとドキっとしますよね。と店員に言われた。店内で別途、販売しているカステラの賞味期限が昨日で切れていた。教えてあげたら店員に礼を言われた。かつては私も小売業で働いていた。何となく懐かしかった。

コーヒーを飲みながら思索した。結論から言うと、人は結局、見たいものしか見ないのだ。
頭の良し悪しは関係ない。脳にフィルターのかかっている人間の何と多いことか。
ある頭の良い知人が、ある特定の国と政党を誹謗中傷するSNSのページに「いいね」を押していた。しかしながら、我が国の国家元首が彼の毛嫌いする国にルーツを持っていることを知らない。言っても耳を貸さない。私の発言に疑問を差し挟むこともしない。自分のフィルターで全てを判断している。かつての勤務先の経営者もそうであった。過去の自分の成功体験にしがみつき、結局、会社を倒産させてしまった。55歳にして家も預金も家族も失ってしまった。彼は今はどうしているのか?それから仕事の方であるが、今朝、憧れの、片思いをしてる、あの上司から仕事がきちんと為されていると褒められた。偉いさんの職場見学があるのであるが指示通り、正確に業務が片付いていると褒められたのだ。
別に付き合っているわけでもないのでが、何だか舞い上がってしまった。

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