給料ドロボー? 課長よりもプライドと給料の高い平社員


ある男性がいました。地元の進学校を卒業した後に、大学に進学、学部は工学部、理系でした。大学卒業後は生まれた場所である九州の地元の大手メーカーに就職しました。主に技術畑を歩み、順調に出世しました。大卒の工場勤務です。

このメーカーの工場で働く人間のほとんどは地元の子会社の採用ですが、彼は東京本社の採用です。給与体系も一般の従業員とは違います。高給取りです。係長まで出世しました。フォークリフト、玉掛け、衛生管理者、プレス作業主任、いくつかの資格も取得しました。これまでの人生では大きな問題は何もありませんでした。

ところが、このメーカーの業種が斜陽産業になったことも関係して、会社の業績は悪化します。昭和の時代には良かった、この会社も平成の世では業績が右肩下がりとなり、遂には会社ごと、同業他社に身売り、吸収合併されてしまいます。

彼の人生に一波乱が起きるのは、これからです。吸収合併された当時、彼は係長でした。管理職です。年齢的には30代後半でした。

社名が変わり、会社の制服も吸収された会社のものではなく、吸収した親会社のデザインになり、給与明細の封筒に記載される会社の名前も変わりました。そして、この係長にとって何よりも変わったのが、親会社から管理職が出向してきたことでした。ビリヤードの玉突きの如く、弾き飛ばされる形で彼は左遷の形で現場の三交替勤務に異動になります。

この人事異動の辞令が出されたとき、内容に到底、非常に、まったく、絶対に承服出来ない彼は子供のように泣いて暴れました。

遂には東京本社から、わざわざ九州まで人事担当の人間が来て、彼に説明、説得、はやい話が「詰める」ことをしました。

「イヤなら辞めろよ!!!!!!!!」

「やめちまえよ!!!!!!」

ここまで言われて、彼は初めて自分の置かれた立場、状況を理解したようです。彼にとって幸いだったのは、「給料は据え置き」だったことです。

左遷されたからといって、大幅に給与ダウンということにはなりませんでした。中途半端に労働組合が強いと、こんなことになります。辞令を受け入れた彼は、現場に出て三交替勤務のラインに入ります。自分の上司は高卒で現場に入り、この道10年以上の人でした。自分よりも若い人です。今まで部下として見ていた人間に使われる立場です。しかし、給料は部下である自分の方が上司より高いという「ネジレ」逆転現象が起きています。

彼の、この三交替の現場では間接部門の仕事でした。思いのほか楽な仕事でした。そして周囲を見ると、ほぼ同時期に左遷されてきた「元」係長がたくさんいました。皆、人件費が高い(給料が高い)でも、新会社になってからは管理職としての仕事がない、という理由で飛ばされてきた人ばかりです。

その現場では「高卒の上司よりも大卒の部下の方が給料が高い」という何ともおかしな?状況が続いています。この「元」係長の給料は、最近判明したところによると親会社から出向してきた課長よりも高い給料だというのです。

平社員のほうが課長よりも給料が高いというアベコベな状態です。この「元」係長は後輩に適当に仕事を振って、今日もチンタラ働いている「フリ」だけしています。「どうも姿が見えないな」と思ったら喫煙所でタバコを吸っていたりします。彼を見ていると「サラリーマンは気楽な稼業ときたもんだ」と言いたくなります。しかしながらプライドだけは異常に高いのです。

彼にはノルマの数字のプレッシャーもないようです。仕事についても後輩に割り振って、自分は適当にフラフラしています。口の悪い人間は「給料ドロボー」と陰で言っています。しかしながら、彼が、このことで「詰められる」気配はなさそうです。

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