会社の同僚とハローワークで出会う
かねてより応募を検討していた企業に求人申し込みをするためにハローワーク、公共職業安定所に行った。
夜勤を定時で上がり、午前9時30分くらいに地元のハローワークに到着、一応新着求人をチェックしようと考えて番号の書かれた緑の札をもらいパソコンの、前に座る。
と、そのときに何処かで見たような顔の女性が、同じく緑の列の奥の席に座り、求人情報をチェックしている。
同じ会社の人間であった。この女性とは特別に親しいわけでもないし、長い時間一緒に仕事をしたことがあるわけでもない。
しかしながら、お互いに顔は知っている。名前は知らないであろう。
顔は知っているが名前は知らないはず。お互いに。たぶん。
嫌な予感がした。今日は帰ろうかとも思ったが時間がない。今日は金曜日なので、今日を逃すと、また来週になる。
この女性も、会社を辞めることを検討しているのであろうか?
ジャケットの襟で顔を隠して求人をチェックした。めぼしいものはない。
求人カウンターの待合票?銀行や郵便局と同じシステムの紙を引っ張って順番を待つ。
こっそり隠れて、件の女性を見ていると、受け付けで書類を渡されていた。あの様子では今日が初めてなのではないか?
「518」これが私の受付番号である。
そうこうするうちに自動ドアから、またどこかで見たような顔が入ってきた。背の高い男である。彼も、また現在は違う部署で仕事をしているが、かつて同じ部署にいた人間である。
しかしながら、それほど近いところで仕事をしたことはない。名前は知らない。
私は夜勤なので平日の日中も動けるが、この二人は日勤のはずである。今日は金曜日である。有給休暇を使ってきたか?それともズル休みか?
いったい何があったのか?
しかも、2人も。
そうこうするうちに「518番でお待ちのかた17番カウンターへ、どうぞ」という機械的なアナウンスが聞こえる。
顔を隠しながらであったが17番カウンターを探していくと、例の女性が座っているソファの前のカウンターであった。
結果から言うと、顔を隠したつもりであったが、女には顔を見られた。私の顔を見て、口に手を当てて驚いた顔をしていた。見てはいけないもの、あってはいけない光景を見た顔である。マズイなと思う。向こうもそうではないか。
女に背を向けてカウンターに座る。
職員「今日はどういった、御用件で?登録カードを見せて下さい」
背中に女の視線を感じる。ジャケットのポケットから登録カードと求人票を取り出すつもりであったが、
私「すいません。今日は時間が押してますので、後でまた来ます」
左腕に時計もしていないのに、時間を見るふりをして袖をまくり、顔をそむけながらハローワークを後にした。履歴書も職務経歴書も封筒も用意してあったのに、結局、申し込みは出来なかった。
あの女は、会社で私と職業安定所で出会ったことを言いふらすであろうか?
仮にそうであれば自分も、その場にいたこと、会社を辞めたいと考えていることが周囲に知られてしまう。
なので、多分誰にも言わないであろう。しかしながら女はオシャベリである。後先を考えずに、だれかれ構わず、何でも話す人間をいくらでも見てきた。
世の中にはバカの方が多いのだ。
それにしても、外応は「大否」と出た。今の勤務先は腐れ縁の会社なのか?
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