家族経営
学生時代にいくつかのアルバイトを経験しました。
そのうちのひとつに水商売のアルバイトがありました。
たまたま、偶然入ったお好み焼き屋さんに「アルバイト募集」の張り紙があったのです。まー、難しいことを言わずに採用してもらえました。制服は自前で黒のズボンにネクタイです。
店に行くと、まず床に掃除機をかけます。次に塩盛りを玄関、便所、神棚に備えます。ある程度の段取りがついたら有線で演歌をかけて、ママさんの作った賄いを食べます。ジャコを使ったメニューが多かったですね。
それで、この水商売のアルバイトの先輩にBさんという人がいました。学年でいうと私のひとつ上になります。この先輩は大学卒業後は食品メーカーに就職することが決まっていました。営業の仕事だそうです。
それで、当時のお店はママさん、ママさんの娘、次女、Bさん、私、アルバイトのオバさん5人でした。それで店の看板がママさんの次女のチーママです。
当時42歳だったのですが27歳くらいにしか見えない、若い、綺麗な人でした。それで、そのチーママですが、店の中で馴染みの客に身の上相談をしているのです。
話を聞いていると、ママさんは昔、売れっ子芸者だったそうです。若い時は相当な美人だったそうです。それでママさんは、かつて自分が経験したように自分の娘、次女であるチーママを売りに出したというのです。
買ったのは、当時、悪役映画俳優としてVシネマなどに多数出演していた、ある役者さんです。
金額は毎月300万円を店で飲んでいく、売り上げを作るというものです。
ママさんは毎月300万円の売り上げと引き換えに自分の娘を売ったのです。
それで27歳の時に売られて15年.今年で42歳になるけれど、もういい加減、イヤになった、やめたい、というのです。愛人関係を終わりにしたいというのです。
精神的に病んで、向精神薬にも手を出しているということでした。占いやお祓いも、いろんなところで受けてきたそうです。占い師に言われて、何回も名前を変えました。
このチーママが実際は42歳なのに27歳くらいに見えたのは、彼女の頭の中では時間が止まっていたからかもしれません。
この人間関係で厄介なのが普通の会社でいうところの上司と部下が親子であるということです。上司というか、店のオーナーであるママさんにすれば毎月300万円の売り上げを失うわけですから、今まで通り次女を愛人にしておきたいわけです。
一方、娘の方も自由意思を持った人間ですから、親子ほど年齢の離れたジジイにやられるのも、いい加減ウンザリしているわけです。
家族経営にも、何かと難しいものがあることを、そのとき知りました。結論から言うとチーママは愛人関係を終わりにしました。その後、私のアルバイトの先輩であるBさんと結婚しました。
Bさんは、この時、23歳、元チーママは43歳でした。ママさんが無理矢理、この二人をくっつけたそうです。とても強引な人でしたから、このくらいの仕事は朝飯前だったのではないでしょうか。この二人が今でも幸せな結婚生活を送ってているのか、いないのかまでは私も知りません。
- PREV
- 言うことと、やることが違う上司
- NEXT
- 笑点のザブトン運びに転職したい!