地方公務員の労災事故


安定していて給料も良く、楽な仕事の代名詞のように言われることの多い地方公務員ですが、時には命を落とす労災事故に巻き込まれることもあります。

ある日本海側に面する県庁所在地の市役所に勤務する50代の男性がいました。肩書きも、それなりに立派なものが付いていました。水産課の責任ある立場の人間として、それなりに仕事をこなしていました。新卒で公務員試験に受かり、公務員歴30年のベテランです。公務員以外の仕事はやったことがありません。民間企業での仕事の経験はゼロです。

ある時、市役所の水産課で、地元の水産業の実態を把握しなければならないということで実際に漁船に乗り込み、漁師の人たちと共に沖に出ることになりました。

普段は背広を着てネクタイを締めて、空調が完備された役所の中で仕事をしている人間が雪の降る真冬の日本海に船で沖合に出るのです。


当日は背広にネクタイ、足元はゴム長、背広の上にカッパを着て船に乗り込みました。お供に20代の若い男の部下が付き添うことになりました。

大きく揺れる船の甲板で、この背広を着た男二人は漁師の人たちからすると、かなり邪魔な存在でした。それでも漁師の人にすれば、無下に扱うわけにもいきません。

船酔いに苦しみながらも、この50代の公務員は、部下の手前、仕事をするふりだけはしていました。と、その時です。この50代の公務員は船が大きく揺れた拍子に船の下部に設置されている生け簀、水槽の部分にスッポリ落下してしまったのです。

つい、さっきまで甲板の上を歩いていた人間が急に視界から消えたので、探してみると船の底に設置された生け簀の中に魚とともにいるのです。これで魚は傷がつき、値段が下がったかもしれません。

良く「板子一枚下は地獄」と言いますが、まさにその通りでした。水槽の水は海水と同じく氷点下です。さらに悪いことに、この中年公務員は泳げないカナヅチでした。おまけに心臓に持病を抱えて、毎日欠かさず薬を服用していました。
それで、このこの中年公務員は周りの救助も虚しく、そのまま死んでしまいました。トバッチリを受けたのは漁師の人たちです。
労災事故扱いになるので警察からも事情聴取されました。人の納めた税金で食べている公務員は大人しく目立たないようにしておけば良かったものを民間の現場にシャシャリ出るから、こんなことになるのです。「公務員は社会の寄生虫だ」と考えていれば、こんな事態にはならなかったはずです。

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