逆パワハラの事例、部下からのいじめ

高校卒業後、新卒で大手メーカーに入社した若者がいました。高卒ですから工場の現場の仕事です。ちなみに子供時代のアダ名は「のび太くん」です。ドラえもんの主人公、のび太くんにそっくりな風貌をしています。ただし漫画のドラえもんと違うのは、こののび太くんには困った時に助けてくれるドラえもんがいないということです。問題が発生したときには自分で解決しなければなりません。

この「のび太くん」不器用ながらも、それでも真面目に仕事をして会社では、それなりに出席して数人の部下を使う立場になりました。部下には正社員だけではなく派遣社員もいます。

「上司」と呼ばれる立場になっても、それなりに順調に仕事をこなしていました。それから、ほどなくして派遣社員で新しい男性が入って来ました。その派遣社員は、子供の頃からの天敵「ジャイアン」です。ジャイアンは子供の時から身体も大きく、ケンカをしても負け知らず、怖いもの無しのガキ大将でした。中学校で不良デビューして、一応高校へは進学したのですが、夏休み前の一年で中退しています。高卒の資格もありませんから、まともな会社では雇ってもらえるはずもなく、仕方なく派遣社員になったというわけです。

このジャイアンが入社した時、のび太は一瞬、イヤな予感がしました。子供時代の忌まわしい記憶がよみがえります。

会社でジャイアンがのび太くんと顔を合わせた時、ニヤリと不気味な笑いを浮かべました。

のび太くんの予感は的中します。上司として部下のジャイアンに接するのですが、ことごとくナメられてしまいます。

朝礼で「おはようございます」のあいさつをしても無視。仕事の予定を説明していても、横を向いて聞いていない素振りです。仕事で失敗しても「テメーの説明が悪いんだろ!おう!」で逆切れです。

上司からのパワーハラスメントは聞いたことがありますが、部下からのパワハラ、いじめは初めて経験するものでした。しかも相手は労働組合にも加入していない正社員ではない派遣社員です。

困った「のび太くん」が上司に事情を説明しても「何だ?派遣社員の一人も管理できないのか?部下の管理も仕事だぞ!」と逆に評価を下げられる始末です。相談どころではありません。

そうこうするうちにジャイアンは明らかに仕事の手を抜き始めます。トイレに行く振りをして「大」の個室に入りタバコを吸う。それでしばらく戻ってこない。

あきらかに不良と分かる製品を下工程に流す。不良が発見されるたびにラインはストップします。不良発生を告げる赤いランプがラインの上で回りっ放しになります。

生産の出来高の数字もジャイアンが来てから右肩下がりになります。ノルマは当然、未達です。のび太君は上司にも詰められるようになりました。理由を説明しても上司からは、「オマエは人の管理が出来ないんだな」と言われる始末です。

のび太くんは、うつ病になりそうでした。異動願いを出すことも考えましたが、「こんなものを持ってくるくらいなら辞表を持ってこい」と言われそうなので、それも出来ませんでした。

さらに、それからしばらくして冷や汗が吹き出しそうになる出来事がありました。会社側の方で人材不足を理由に派遣社員を正社員にする動きが出てきたのです。

派遣社員を正社員にしたことは過去にもありました。このときの条件は年齢的に20代、30代であること。仕事の評価が良いこと。この2点でした。この時には派遣社員の約40パーセントくらいが正社員になりました。

もし仮に、ジャイアンが正社員になった場合、自分と同じく職場集会にも参加するでしょうし、場合によっては現在、部下であるジャイアンが自分の上司になる可能性だってあるのです。のび太くんは、しばらくは生きた心地がしませんでした。今日も会社に行かなければならないと思うと心臓がバクバクして胸が苦しくなるのです。

結論から言うとジャイアンが正社員になることはありませんでした。仕事ぶりが悪いので評価も低かったのでしょう。

それからのジャイアンは荒れました。中卒の自分にも正社員になれるチャンスがあるかもと期待していたのが裏切られたのです。誰かれ構わず怒鳴り散らすようになりました。欠勤も目立つようになりました。

そんなこんながありましたが、結局、半年ほどでジャイアンは同じ派遣会社の人間と会社の中で殴り合いのケンカをして、おまけにケンカの後で怒ったジャイアンは、そのまま家に帰ってしまったのです。

ジャイアンは職場放棄で帰宅したという理由で契約打ち切り?契約違反?とかの理由で解雇になりました。ちなみにケンカの理由は「口のききかたが気に入らなかった」という子供じみた理由です。部下からの逆パワーハラスメントには、こんな事例もあります。

約半数が「同僚」による行為 深刻さを増す「大人の職場いじめ」

https://news.livedoor.com/article/detail/21216913/

近年「大人のいじめ」が深刻な問題になっている。

厚生労働省の統計によると、「いじめ・嫌がらせ」に関する労働相談が、ここ10年で2倍に激増。

労働問題に取り組むNPO法人「POSSE(ポッセ)」を立ち上げ、膨大な数の「いじめ・嫌がらせ」に関する相談を受けてきた坂倉昇平氏がその実態を、近著『大人のいじめ』(講談社現代新書)をもとに解説します。

後輩による集団いじめ

筆者が受けた最近の労働相談から、「後輩」によるいじめも紹介しておこう。30代のいわゆる「中年フリーター」の男性に対する職場いじめだ。

男性は娯楽施設内のポップコーンやドリンクなどを販売する売店で働いており、時給はほぼ最低賃金でシフト制だが、週に5日出勤し、勤続は10年以上に及んでいた。

ふだん売店には、学生と20代のフリーター合わせて10人ほどが働いている。男性は最年長であり、勤続年数でいっても全員の先輩にあたる。それが突然、いじめの標的となってしまったのだ。

レジ打ちをしていると、気づくと周りに誰もいない。同僚全員が、男性を一人残して、厨房に引き上げてしまったからだ。逆に男性が厨房に向かうと、同僚たちはさーっとレジに集まっていく。さながら、サッカーのオフサイドトラップである。これが毎日、何ヵ月も続いた。精神的苦痛に加え、レジ打ちにせよ調理にせよ、業務を一人でやらなければならず、負担も大きかった。

学生たちをけしかけ、いじめのリーダー格になっていたのは、後輩のあるフリーターだった。すれ違いざまにわざと肩をぶつけられたり、仕事の情報を回してもらえなかったり、全体の飲み会にも自分だけ誘われなかった。

「どうしてそういう態度をするの?」と思い切って聞いても、無視されるだけだった。特に恨まれるようなことをした記憶はなく、因縁をつけるとしたら「30代になってもフリーターの男性」であることくらいしか思いつかなかった。

一部の学生アルバイトは、「手伝わないようにと言われました」と申し訳なさそうに打ち明け、周りの目を盗んで業務に手を貸してくれた。

男性は会社に相談し、主犯格の後輩フリーターとの話し合いを求めた。しかし、話し合いは相手から拒否され、「無視ではなく、興味がないだけ」という回答があったと会社から説明があった。会社はそれ以上何も対応してくれなかった。

男性はうつ病を発症し、長期間休職せざるを得なくなった。現在は復職し、出勤シフトを減らして働いている。いじめはなくなったが、上司はうつから復職した彼にわざわざ「研修中」のバッジを着用させ、「トラブルを起こす厄介者」として、退職に追い込もうとしている。

職場いじめの約半数が「同僚」による行為

「職場いじめ」と聞いて、「経営者や上司によるパワハラ」を想像する人にとっては、こうした同僚によるいじめ行為は例外的なものと感じるかもしれない。しかし、統計を見ても、同僚による職場いじめは存在感を増している。

2021年の厚労省による「職場のハラスメントに関する実態調査」によると、「パワハラ」に該当すると判断した事案があった企業1990社のうち、ハラスメントの行為者と被害者の関係性について、「役員」から部下に対する事案があったと回答した企業が11・1%、「上司(役員以外)」から部下に対する事案があったとする企業が76・5%だった。

その一方で、「部下」から上司に対する事案が7・6%、「同僚同士」の事案は36・9%あった。「同僚同士」と「部下」からを合わせると44・5%になり、「役員」からの「パワハラ」よりも、はるかに多い。

行為者の区分がより詳細なのが、連合による「仕事の世界におけるハラスメントに関する実態調査2021」だ。この調査では、ハラスメント被害を加害者別に分類している。なお、同一の事件でも、複数の分類(「身体的な攻撃」「精神的な攻撃」「人間関係からの切り離し」「過大な要求」「過小な要求」「個の侵害」「セクシュアル・ハラスメント」「その他ハラスメントなど」)にまたがるものは、重複して集計されている。

この調査によると、加害者は「上司」(経営者も含まれている)が535件、「先輩」262件、「同僚」188件、「後輩」47件、「部下」21件となっている。先輩・同僚・後輩・部下を「広義の同僚」(518件になる)とすると、職場のハラスメントの件数(1151件)のうち、加害者の割合は、上司が46・5%、広義の同僚が45・0%になる。同僚からの職場いじめが、上司によるものと拮抗し、ほぼ半数を占めるのだ。

目立つ「同僚のいじめ」

さらに決定的なことに、労災認定された職場いじめの最新の件数においても、同僚によるいじめ被害の深刻さが裏付けられている。

前述のように、2020年5月末から、厚労省の精神障害の労災認定の基準となる出来事の項目において、従来の「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」が、「上司等」による「パワーハラスメント」と、「同僚等」によるものに二分された。加害者が上司であったり、豊富な知識や経験をもっていたり、集団であったりと、被害者に対して「優越的な関係」にあると判断された場合に「上司等」によるものとして前者に分類され、そうでない同僚による行為は後者になる。

2020年5月末から翌年3月末までの、「上司等」による「パワーハラスメント」として労災が認定された事例は99件だった。一方、筆者が厚労省労働基準局補償課に直接確認したところ、同期間に「同僚等」によるものと分類されたのは62件であるという。

つまり、被害者に精神障害を発症させ、労災が認定されるほどひどい職場いじめ161件のうち、少なくとも39%、約4割が同僚によるものということだ。それどころか、「パワハラ」6割の中に、「優越的な関係」にある同僚による行為も含まれている可能性がある。

このように、同僚がかなりの件数でいじめの加害者になっていることが、近年の職場いじめの大きな特徴だ。

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